- ものづくり補助金の事業計画書の書き方
- ものづくり補助金事業計画書のポイント
- ものづくり補助金の事業計画書作成にかかる時間
この記事では、ものづくり補助金の事業計画書の書き方とポイントを解説しています。ものづくり補助金では中小企業が行う設備投資やシステム投資の負担を和らげ、中小企業の事業運営を手助けしてくれます。
採択されるには事業計画書の出来が肝になるため、この記事で書き方やポイントを理解していきましょう。
ものづくり補助金の事業計画書の書き方
ものづくり補助金の事業計画書は、以下の3点をベースに作成していきます。
- 補助事業の具体的取組内容
- 将来の展望
- 付加価値額等の算出根拠
ものづくり補助金の公募要領ではこの3点を盛り込むことが定められているため、これらの項目をわかりやすく記載して事業計画書を作成していくことが必須になります。
なお、事業計画書の作成においては、以下の形式を守りましょう。
- 10ページ以内で作成する
- Word等で作成し、PDF形式で提出する
ここから、ものづくり補助金の事業計画書に記載する具体的内容を解説してきます。
記載内容①:補助事業の具体的取組内容
まずは、「補助事業の具体的取組内容」についてです。
補助事業の具体的取組内容については、以下の項目を網羅して記載していきましょう。
- 自社の沿革、これまでの事業経緯
- 機械装置等を取得することの必要性および補助事業の目的、手段
- 具体的な目標と具体的な達成手段
- 投資する機械装置等の型番
- スケジュール
- 中小企業庁が示す指針やガイドラインとの関連性
- 競争力強化や差別化に繋がる方法や仕組み
それぞれ、具体的に説明していきます。
- 自社の沿革、これまでの事業経緯
-
自社の設立からの事業変遷や培ってきた強みおよび経営資源などについて説明します。
- 機械装置等を取得することの必要性および補助事業の目的、手段
-
設備投資やシステム投資を行って補助事業を実行する必要性を自社の事業環境を踏まえて説明します。
- 具体的な目標と具体的な達成手段
-
補助事業の定量的な目標とそれに向けた生産性向上・販路開拓等の具体的な達成手段を説明します。
- 投資する機械装置等の型番
-
投資対象となる設備やシステムに関する具体的内容を説明します。
- スケジュール
-
設備やシステムの取得時期や技術の導入時期についての詳細なスケジュールを説明します。
- 中小企業庁が示す指針やガイドラインとの関連性
-
「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する 指針」又は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」と事業計画書の関連性を説明します。
- 競争力強化や差別化に繋がる方法や仕組み
-
補助事業を行うことで、自社の競争力強化や競合他社との差別化に繋がる仕組みやその実行体制について具体的に説明します。
補助事業の具体的取組内容は、補助金を活用して行う取り組みを具体的に伝えるための書類です。図解や写真を積極的に使用し、審査員が目で見てわかる書類を作成することがポイントです。
記載内容②:将来の展望
次に、「将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)」についてです。
将来の展望については、以下の項目を網羅して記載していきましょう。
- 補助事業で対象となるユーザー、マーケット及び市場規模
- 補助事業の事業化見込み
それぞれ、具体的に説明していきます。
- 補助事業で対象となるユーザー、マーケット及び市場規模
-
補助事業のターゲット市場について、価格面や性能面から見た優位性や収益性を整理した上で説明します。対象となる市場の規模についても記載しましょう。
- 補助事業の事業化見込み
-
補助事業で見込んでいる成果(売上や利益等)について説明します。計画している売上規模や製品価格、ターゲットとなる時期について記載します。
将来の展望に関する記述が必要な理由は、投資が企業にとって効果が見込めるものなのかを審査側が判別するためです。
国としては、中小企業が生産性向上や業績向上に繋げることを期待してものづくり補助金を運営しています。したがって、期待効果について計画や根拠を指し示すことが重要になると理屈です。
記載内容③:付加価値額等の算出根拠
最後に、「付加価値額等の算出根拠(会社全体の事業計画)」についてです。
ものづくり補助金では、付加価値額の増加や給与支給総額の増加が基本要件として定められています。
したがって、それぞれの増加要件を満たしていることと合わせて、その算出根拠についても指し示す必要があります。
なお、付加価値額や給与支給総額の数値については、補助金交付後の報告書提出において進捗の確認が入るため、その点も認識したうえで事業計画書を策定しましょう。
ものづくり補助金事業計画書のポイント
ものづくり補助金の事業計画書を作成する際は、いくつかのポイントを押さえて進めると有効です。
事業計画書を策定する際のポイントは以下の通りです。
- 要件を押さえる
- 自社の事業環境を整理してストーリー化する
- 審査項目を盛り込む
- 加点項目を盛り込む
- 図表や写真を使用して視覚化する
これらのポイントを押さえた上で事業計画書を作成することで、採択の可能性が高まります。
ここから、それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
ポイント①:要件を押さえる
ものづくり補助金には、申請にあたって基本要件が定められています。
基本要件を満たしているということが伝わらない事業計画書はその時点で採択対象から外れてしまいますので、公募要領で基本要件を確認して事業計画書には必ず要件を満たしていることを記載しましょう。
基本となる申請要件の例
- 公募要領で定められる補助事業実施期間内に発注や納入、支払いなどの全ての手続きが完了するか
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる、3~5年の事業計画を策定しているか
- 事業場内の最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円の水準とする、3~5年の事業計画を策定しているか
- 付加価値額※を年率平均3%以上増加させる、3~5年の事業計画を策定しているか
※付加価値額=「営業利益+人件費+減価償却費」 - 補助事業を行う工場や店舗を有していること
ポイント②:自社の事業環境を整理してストーリー化する
ポイントの二つ目は、「自社の事業環境を伝え、補助金を活用して設備投資を行い、生産性向上や付加価値額の向上を行う必要とメリットがある」ことを伝える点です。
例えば、製造業の場合は以下のようなストーリーが考えられます。
製造業の場合のストーリー例
- 当社は、食品加工製造会社として安定した既存取引先からの受注で堅調に業績を拡大してきた
- しかしながら、円安や原材料価格の高騰で利益率が圧迫しており、さらに海外企業との競争も激しくなっている
- 主要取引先の内一社から、地域の名産品を活かした新しいお土産品の開発および販売の共同推進の引き合いが来ている
- 販売ニーズは検証できており事業化の見込みは立っているが、当社側で新たな生産ラインの設置が必要になる
- よって、ものづくり補助金を活用して設備投資を行いたい
補助金が必要な理由を伝える際は、単なる設備の入れ替えなどではなく、自社が置かれている事業環境や商流上の課題を整理した上で、「設備投資等により販路拡大や省力化による生産性向上が実現できる」ということを、事業計画書を通じて審査員に伝えるようにしましょう。
ポイント③:審査項目を盛り込む
審査項目を把握して、事業計画書に盛り込むことも重要です。
ものづくり補助金では、公募要領で審査項目が定められています。
つまり、「審査員はここを見ていますよ」ということを予め教えてくれているわけです。したがって、審査項目を事前に理解した上で事業計画書を作成することはマストになります。
なお、ものづくり補助金の審査項目については以下の記事で解説していますので、ご一読ください。
ポイント④:加点項目を盛り込む
ものづくり補助金では、審査項目とは別に加点項目が存在します。
成長性加点・政策加点・災害等加点・賃上げ加点といった複数の切り口で加点項目が定められているため、自社が該当する場合は事業計画書に盛り込み書類も添付するようにしましょう。
ポイント⑤:図表や写真を使用して視覚化する
事業計画書を策定する際には、図表や写真を効果的に使うと、採択可能性が上がります。
理由は、審査員が事業計画書を読んだ時に一目で内容が理解できるためです。
特に、審査項目の部分など重要な点や強調したい点は図表や写真を用い、視覚的な面から伝える努力をしましょう。
ポイント⑥:テーマ名をキャッチーなものにする
ものづくり補助金の事業計画書では、テーマ名を記載します。
些細な点のように思われがちですが、補助金を使ってどのようなことがしたいのかを端的に伝えることができる要素であるため、記載する際は一度立ち止まって考えることをおすすめします。
ものづくり補助金の事業計画書作成にかかる時間
ものづくり補助金の事業計画書を作成するにはどれくらいの時間がかかるのか疑問を持たれているかと思います。
作成者によってまちまちですが、補助金事務局のものづくり補助金総合サイトが発表している統計データだと、「30時間以内」が最も多く次いで「50時間以内」という回答結果データになっています。
計画書の作成には想定以上の時間がかかることがありますので、事業計画書を作成する際には余裕を持って準備するようにしましょう。
まとめ|事業計画書のコツを押さえて最短距離で作成しよう
本記事では、ものづくり補助金の事業計画書の書き方と手順について解説してきました。
補助事業の具体的取り組み内容、将来の展望、付加価値額等の算出根拠など、事業計画書作成に必要な要素を記述することはもちろん、各ポイントを押さえながら計画書を策定していきましょう。
以上を踏まえて、効果的な事業計画書を作成し、ものづくり補助金の採択を目指しましょう。